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2.スポーツ障害を減らすには・・に行く
1. スポーツ傷害とは・・(2000.11.05より連載)

スポーツ傷害とは,スポーツ外傷とスポーツ障害の総称です.スポーツ外傷とは,スポーツ中に一度に大きな外力が加わることにより生じるケガのことで,具体的には捻挫,脱臼,打撲,骨折,創傷,突き指,腱断裂,肉離れ等があります.一方,スポーツ障害とは,スポーツ中に繰り返し繰り返し加わる小さな外力(この外力が一度だけ加わる程度では,ケガが起こらない)により,徐々に生じるケガのことで,具体的にはジャンパー膝,ランナー膝,野球肘,野球肩,テニス肘,ゴルフ肘,フットボールアンクル,平泳ぎ膝,疲労骨折,シンスプリント,アキレス腱周囲炎等があります.スポーツ障害は,スポーツ中に選手が同じフォームで繰り返し繰り返し動くことになるので同じ部位に小さな外力が集中するために起こるのです.したがって,障害名にスポーツの名前やスポーツ動作の名前がつくものが多いのです.

スポーツ外傷は,スポーツ中に生じるアクシデントですから,その予防は限界があります.足関節捻挫を起こす危険性が高いスポーツ(バスケットボールやバレーボール等)では,足関節にテーピングや装具を装着して予防するわけですが,すべての外傷を予防することはできません.一度,スポーツ外傷を負った既往があれば,再発しないように手段を講じます.スポーツ選手に対する事前のメディカルチェックを行う必要があるわけです.

では,スポーツ障害は,どうでしょうか.スポーツ障害は種目特異性があり,その原因も明確で,障害の起こる部位や,どういう選手がなりやすいのかも明らかです.したがって,スポーツの種類や,選手の年齢に応じて,スポーツ障害に対する予防ができます.スポーツ外傷では予防が困難であるのに対し,スポーツ障害は予防が可能であるという点で,スポーツ傷害として片付けるのではなく,両者を明確に分けて考える必要があるのです.
では,スポーツ障害の予防を考えていこうと思いますが,まずはスポーツ障害の3大要因をあげてみましょう.

1.個体の要因
2.環境要因
3.方法要因

です.

1.個体の要因とは,一般に個人差といわれるものです.多くのスポーツ障害は,体重のかかる下肢に発生します.下肢のアライメント(下肢の軸)の善しあしと,スポーツ障害の発生には密接な関係があります.上肢のスポーツ障害では,上肢のアライメントが関係しています.また,柔軟性や,筋力,骨の強さ,ホルモンのバランス等も関係しています.

2.環境要因とは,playing surfaceの問題が一番にあげられます.すなわち,ランニングを行うのは芝の上や土のグランドが望ましいのですが,アスファルトの上は最悪です.体育館でもクッション性のよい床もあれば,堅い床もあります.さらに,履くシューズによってもその環境は変化します.

3.方法要因とは,練習の頻度,練習時間,休養の取り方等,練習方法の問題で,コーチや監督に責任がある要因です.

次回からは,個体の要因と環境要因を整え,スポーツ障害を減らす方法をご紹介していこうと思っています.
 


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